山手線の駅にこんなポスターが貼ってある。
「メロンが嫌いな人なんてまずいないよね」という前提で書かれたコピーだが、私は昔からメロンが食べられない。
アレルギーはない。
単にあの芳香を芳しいと思えず、あの甘味を美味だと思えないだけだ。
本当に昔から嫌いなので、大人になったら食べられるかなと思って口に入れてみたら舌が拒絶して泣きそうになった。それくらいメロンとは馬が合わない。
だが、事実としてメロンは日本人に広く愛されている。
メロンを象った「メロンパン」の存在を知らない日本人は多分いない。
これは常々力説しているのだが、本来メロンパンはその形がマスクメロンに似ているからメロンパンという名前がついているのだ。断じて「メロンの味がする」ことは必要十分条件ではない。
「スペシャルメロンパン」と称してメロンの風味をつけたり、ひどいときは生メロンを挟み込んだりしているメロンパンがあるが、あれは本来のメロンパンではない。邪道だ。
メロンの形をしているパン、それこそが本当のメロンパンだ。
メロンを見ても、私は子ども時代には帰れない。
みんなが大切に持っているタイムマシンの切符が、自分にとってはいつまでも無用の紙くずでしかないのは少し寂しいものがある。
余談だが、このポスターに載っているメロンのパンケーキは、有楽町に実在する老舗喫茶店のメニューらしく、切り分けると中からゴロゴロとメロンが出てくるそうだ。
考えるだけで身震いしてしまう。
メロン。
ごめん、やっぱりどうしても好きになれない。