中学生の頃、通学時間がトータルで90分前後かかる私立中に通っていた。
自分の住む町行きの電車は一時間に一本しかない。乗る電車は限られているので、同じ地元民人は先輩後輩含め、自ずと顔見知りになる。
一時間に一本しか電車がないのは他校の生徒も同じで、気がつけば、通学のときだけ顔を合わせる他校の友達が何人かできていた。
通学に使う路線は、途中まで快速が並走しているが、家の最寄り駅にに向かうには最終的に鈍行に乗らないといけない。
他校の友達が乗ってくる駅は、鈍行しか止まらない駅だった。
北海道の田舎なので、駅の周りにコンビニなんて便利なものはない。
鈍行は、北広島駅で並走する快速列車を待つため、4分から7分ほど停車した。
そこで生まれたのが、人呼んで
「北広(きたひろ)ダッシュ」だ
鈍行が北広島に停車すると、財布と定期を手にして、改札に向かって、走る。
用意、ドン。
急いで改札を出て、すぐ脇にあるキヨスクを物色する。
時間に余裕はない。
お目当てのものを手にしたら急いで車内に戻る。
下手すると、鞄だけ出発してしまうので、かなりスリルがあった。
正直、学校の最寄り駅はそこそこ大きな駅だったので、こんな危険を冒さずとも、キヨスクどころかパン屋でパンを買って帰ることもできたのだが、友達のスリルに便乗したくて何度かやった。
二人掛けの席をずらりと並べた車両のときは、座席の向きを変えて、ボックス席にして帰ったものだ。
今思うと、毎日友達と小旅行みたいなものだったけれど、当時は寮生活に憧れていたので、それを尊いとは思わなかった。
寮生活は、それから5年後に嫌というほど送ることになるのだが、それはまた別のお話。