仕事中にふらりと、ミスタードーナツに入った。
ココナッツドーナツに、コーヒーを頼む。
ミスドは、昔のダブルチョコレートが好きだ。子供の頃、うちにホームステイしにきたマレーシア人の肌の色にそっくりだな、と思いながらずっと食べていた。
しばらく食べないうちにクランチがまぶされるようになって、すごく余計だなと思っている。
今はココナッツのが一番好きだ。
小学生の頃に読んだ「カラフル」と言う小説で、主人公の後輩の女の子の好物だった。それ以来、食べるようになって、いつの間にか好きになっていた。
昔は高級食パンなどなかったので、手頃な手土産はドーナツだった。
親ぐるみで遊ぶような友達だと、よく手土産として箱に入ったたくさんのドーナツをもらう。
友達が帰った次の日の朝ごはんは、よくドーナツになった。
小学生の頃はよく食べる機会があったけれど、一人暮らしをしてからはめっきり食べなくなった。
ミスタードーナツは結構微妙なラインにあるお菓子だ。コンビニでパンを買ったほうが安くてお腹も膨れるし、甘さに飢えているならいっそケーキを買ってしまう。
ショーウィンドウを眺めては素通りする、そんな位置づけだった。
けれど、社会人になってある程度好きな時に好きなものが食べられるようになった時、ふと「ドーナツが食べたいな」と思ったのだ。
ドーナツを席でゆっくりと齧る。
ゆったりと流れる時間、空の青。
子供の頃の、ある日の朝ごはんの味がした。