7ちゃんねるーふみねぇ支店

アラサーニートのよしなしごと

呟き41:大人の夢はお金があれば大体叶う

 

大学生の頃、ひょんなことから結婚式場でアルバイトをすることになった。

 

自分が結婚式に出たのは遥か遠い昔の話で、正直結婚式がどういうものなのかちっとも知らないまま始めた。

 

新人は、人手のかかる披露宴のサービスから仕事を始めていく。

綺麗なドレス、可愛らしい室内の装飾、祝福してくれるたくさんの友人たち、美味しそうなフルコースの料理。

新婦はまるで、子どもの頃に見た絵本の中のお姫様のイメージそのもののように思えた。

 

幸せな雰囲気で進んでいく会場の雰囲気とは裏腹に、スタッフは嵐のように動く。新人はまだインカムを付けないが、進行は押すことはあっても巻くことはないので、わからないことも多い中、ハイヒールでひいひい言いながら動き回った。

やがて、披露宴はつつがなく終わり、ゲストはみんな家路についていった。

「ありがとうございます」

大きな扉を閉めた瞬間、そこは一瞬にして戦場と化した。

白手袋をはめて、執事よろしく新郎新婦にケーキカットのナイフを渡したりしていた社員は、シャツをおもむろに捲り上げて、会場を走る。

 

バスボックスに無造作に放り込まれる食器、全て一緒くたにポリバケツに入れられる残飯、綺麗なテーブルクラスはあっという間に剥がされて、何だか貧相な裸のテーブルが剥き出しになる。

会場の装花はどこからともなく現れた花屋の手によって手早く片付けられ、高砂には生花の代わりに造花が並べられた。

 

明日にはまた、次の披露宴がある。

テーブルの位置を変え、違う色の新しいテーブルクロスを引き、シルバーを並べる。

 

たった一時間少々で、そこはさっきとは全く違う場所になっていた。

 

業界用語で、これを「どんでん」という。

 

このどんでんの洗礼を受けて「大人の夢ってお金を出せば買えるんだな」と思った。

 

子供の頃、おそらく5歳の頃だろう。

「どれみちゃん」の格好をして、写真館で写真を撮ったことがある。

手には公式玩具のステッキ、胸にはタップを下げ、市販されているピンクの衣装にとんがり帽子まで被っている。

「どれみちゃんになれて良かったね」

と親は言ったが、内心「えっ」とちょっとした蟠りがあったことを覚えている。

 

髪型は何故か三つ編みの先を輪にしたもので、帽子から突き出していなかったし、周りに飾られたぬいぐるみは白雪姫の七人の小人で、世界勘違いもいいところだ。

それに、玩具のステッキをいくら振り回しても魔法は使えない。

 

これは本当のどれみちゃんなんかじゃない、と子供ながらに思っていた。

 

今思えば、これは「理不尽な夢」だ。

今のところ人間は魔法は使えそうにない。

 

けれど、大人は「人間は魔法は使えない」ことを知っている。

「本物ののプリンセス」にはなれないけれど、プリンセスの格好をすることはできる。

「魔法の国」へは行けないけれど、想像上の世界の産物を現実で似たように作ることはできる。

 

できる、とは言ってもそれを叶えるのにはそれなりのお金がかかるので何かしら努力をしてお金を稼がないといけない。

それが結果として、夢を叶えることになるのなら、大人の夢もまた尊いな、と思う今日この頃です